ランボー 最後の戦場 (2007 シルベスター・スタローン)

ランボーゴーズトゥハンバーガヒルということで一部の評判(と大部分の顰蹙)をとってる映画。ミャンマーの悪い軍人のみならず無辜の民衆までが盛大に肉片化していく映像のオグリッシュ度には、なんとかナワサワットとかなんとかパユハセナとかいう名前が連なる現場スタッフがおそらく多大に貢献していると思われます(ちなみにSFXはなんとかエフスキーとかなんとかニコフといった人たちがウォッカ飲みながら担当した模様*1)。 セガールの旦那や収監中のウェズやんの最近の作品と同様とはいわないまでも近い規模のプロダクトであることが見て取れるのだが、それを何らかの必然として作品に取り込めたものがシネコンとシネパトスの間を流れる深くて暗い川を渡るのである <適当。 
まあいったいだれが「〜脱出」「〜アフガン」と同じ構造をもつ映画に挽き肉と腐臭を持ち込んで上手く着地できると思うだろうか?って話ですよ。 ここらへんの製作者としての意識とスターとしての無意識のコントロールにはカリフォルニア州知事なんかにもならずにこの三十余年をサバイブしてきた男の真骨頂が見えるといっても過言ではない(とはいうものの肉の腐った臭いとナルシシズムの匂いに同時に襲われ、胸焼け胃のもたれを感じる瞬間もしばしばある)。 
ランボーってのは「1」のラストで泣いちゃったのがバツが悪くて「〜脱出」「〜アフガン」で必要以上に大暴れしちゃったヤツなんだよね*2。スタローンの作品(とくに監督作)は、キャラクター造形の屈折と「ヒーローとしての俺」という自意識が反映されたように見える単純さがいっしょくたになっていて、それがまさにスター映画を観る面白さだったんだけど、彼も老境を迎えてそれが強烈にいびつな形で現れた気がします*3。とくに監督としては(多分無意識的だと思うが)自らのむりやりシェイプアップした老いた肉体に「死」がまとわりついてくるさまと「プライベート・ライアン」以降の残酷描写・ミンチ大会がシンクロする!という発見をスクリーンにくっきりと映し出しており、マイケル・ジャクソンほどではないにしても本当にスターってのは因果な商売だと思いました。
あとオチはまあこうだろーなと思ったけど、いきなりスッキリした顔になっていてあたかも伊藤ハムの包みを抱えてるかのように見えてしまったのは遺憾。古いよ。

*1:一部民族の方々に対する偏見をお詫びします

*2:キャラの心情とはまた別の話ね

*3:3億ドル稼がなきゃならん「インディ」ではこうはいかない…と思う