トーク・トゥ・ハー (2002 ペドロ・アルモドバル)

◆介護には愛情が必要。愛を持って接すれば、それは必ずや患者に伝わります。介護者の愛が深ければ、植物状態からさえ蘇っても不思議ではないのです・・・。ただし、なまなかな愛情では数十年、いや数年も無償のおこないを続けられるものではありません。日常生活の重い負担となる介護を、深い愛情を持ってやり遂げられるのは・・・そう、変態。変態のみなのです◆ただし、童貞はいけません。彼はいわば、「その先」を知らずその状態にあるだけ。一見変態に見えても、「その想いを遂げられる」願いを彼が持ってしまったら、カードは一気に裏返り、患者の健康を脅かすことすら平気でしでかしてしまうでしょう。◆このことから、介護には「完璧な変態性」が求められることが判ります。植物状態の女性患者の介護には、まず性的行為を通じ自らの不能を自覚したものであり、さらに「意識のない人間」こそを愛するもの。換言すれば「肉人形」フェチである者が最適なのです。◆そんな変態に介護されるなんて嫌、ですって?大丈夫です。あなたはその間ぐっすりと眠っているのですから。肉体は精神と違い、愛情の方向性を問うことはありません。愛情の絶対量、それのみが重要になるのです。それに何より、彼はあなたが目覚めた途端にあなたに対するいっさいの興味を失います。蘇ったあなたは、昏睡に陥る前よりむしろ血色も良く、健康になっているかもしれません。どうです、こんないい話はないと思いませんか?◆
・・・とまあ、そんなことが判る教訓映画(違いますか)。「いいひと」でいられるうちはよかったが、自分の抱えた欲望が明らかになったとたんにブタ箱行きになる童貞に涙せよ、という話ですな。正直アルモドヴァルはすっかり高級メロドラマ作家になっちゃって、心揺さぶられるまでは至らない。ベタなのはもともとだけど、気取りすぎだよな。