ナッシュビル (1975 ロバート・アルトマン)

それぞれ一癖あるキャラクターたちが、ギリギリのヤバいシチュエーションに放り込まれてなんかおだやかでないことになる。そんなシーンで観る側が当然予想するような破滅的な展開が(実際にこれ破局じゃない?ってとこまで行くこともしばしばあるにもかかわらず)、流され、やりすごされ、なしくずしにされ、いつのまにか何事もなかったかのように次のシーンが始まっている、そんな映画。すごいと思うのは別にそれでなにかが先延べされたり(サスペンス)切断されたり(ゲージュツ)外されたり(オフビート)するわけではなく、ホントに当たり前の顔で映画が続くところだ。前半のギャグの傾向なんかナショナル・ランプーンかって感じのとこあるし。
クライマックスで起こること(これ本当に破局じゃない?)さえも結としては機能せず、とりあえずなにかするほうがいいんじゃないかと誰かが引っ張り出され、歌が歌われる。その歌を聴いた(詞を読んだ)とき、観るほうはとりあえず感動してしまうほかないんじゃないか。そのあまりの一貫性に。

群像劇の名人アルトマンの最高傑作と称されるが、あれよりこれが上、こいつが下、と並べ替えていった頂点にこの作品が位置するかどうかは疑問。全部観たわけじゃないから断言できないが、これに似た映画をアルトマンは(というか他の誰も)撮っていないんじゃないか。ワンアンドオンリー