アヒルと鴨のコインロッカー(2007 中村義洋)

原作未読。
大学生活を送るため仙台で一人暮らしを始めた学生が、不可解な隣人(たち)に翻弄され…という、謎が謎を呼ぶというか、別に呼んでないのに謎が勝手に増えていく感じの前半部分はちょっとつらいねえ。特に、河崎という隣室の男にそそのかされて、広辞苑一冊を奪うために街道沿いの大型書店をモデルガンで襲撃、というメインの犯罪計画があまりにもブンガクっぽい匂いがしすぎてちょっとな。ここは辞書とかではなく、漫画にアレンジしたほうがよかったんじゃないか?留学生が漫画で日本語勉強するのってありそうだし。手塚治虫(漫画の神様)とまちがえて田中圭一を盗ってきてしまうとかどうか。どうかじゃねえ。
しかもそこで河崎から与えられる指示ってのがまたややこしいんだ。
「お前、店の裏口で曇りガラスごしに拳銃のシルエットを店内に向けてちらつかせながら、3分ごとにドアを蹴っ飛ばせ。それを10回やったら戻って来い。 なに? 時計持って来てない? じゃ、ディランの『風に吹かれて』がちょうど3分くらいだから、一曲歌い終わったらドア蹴っ飛ばす。 これを10セットな。 な」
あー、きっと後ほどいろいろと事由説明があんだろなー、と思わせてしまう人工的なややこしさ。こんな設定を何とかかんとかみせてしまった中村義洋はむしろ偉いかもしれない。
 
前半の出来事の裏の意味があきらかになってくると(いちおう「なるほどね」とは思うけども)、前半で謎としてギューギューに押し込められていた「真相」が、なんだか窒息気味に感じられたのだった。 やっとここを語れますyo! いや早く語れよ!
思い切って留学生のドルジ視点でクロノロジカルに語ってみたほうが面白くなったん邪魔烏賊と思います。そりゃ原作は台無しかもしれんが、スピリットはそっちのほうが伝わるんじゃないスか!!(言い投げ)