スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師(2007 ティム・バートン)

バットマン・リターンズ」も「シザーハンズ」も全然ピンとこなかった自分は(「ピーウィーの大冒険」「マーズ・アタック!」は好きっす)ティム・バートンのいい客じゃないと思っているが、この映画はよかった。つうかあんまり堂々と血があふれるので、ミュージカルとはいえ人斬り床屋をキャラクター化しすぎのバートン&デップに一方で辟易しつつも、思わず泣いた。
人斬り床屋&人肉ミートパイという猟奇噺と、陰謀により全てを失った男が復讐鬼として舞い戻ってくる設定がしっくり噛み合ってない*1ため、中盤の殺戮シーンでのカタルシスは実は今一つなんだが、繁盛し始めたヘレナ・ボナム・カーターの食堂の前に街頭の狂女がやってくるあたりからの避けがたい破局の予感がもう。
床屋が過去にこだわるあまり堕ちてしまう穴のかたちと、そこで滴り落ちる血の飛沫はあの映画のクライマックスで夜空に光り輝く花火に似ている。

役者は全体にレベル高い。ボラットことサシャ・バロン・コーエンが登場から退場まで、儲け役ではあるものの一貫した存在感を示しなかなか。いやあれはジェイソン・シュワルツマンです、と言われたら普通に信じてしまいそうだが。

*1:復讐の対象がどこにいるかはっきり分かってるのに床屋にのこのこやってくるのをじっと待っているってのが(色々理由はつくけども)画的に納得いかない