フィクサー (2007 トニー・ギルロイ)

ジョージ・クルーニーのボス役で出演しているシドニー・ポラックが、1975年にロバート・レッドフォード主演で撮った社会派サスペンス映画のリメイク。
とかいわれても信じてしまいそうな古風なアウトラインのお話をきょうびの意匠でまとめた「ボーン」シリーズの脚本家トニー・ギルロイの監督デビュー作。今年のオスカーにもからんだということでポール・ハギスの「クラッシュ」みたいに腹立たしい映画になってんじゃないかと思ったがそれほどでもなかった。シンプルな話のわりに導入が無駄に凝ってたりはするけど(最近、ものごとを順番通りに語れていない映画がいまいち信用できなくなった)。主役の人は「あの顔でニヤリ」の芸のほかは普通の俳優なので、悪役と聞いていたティルダ・スウィントンに期待したのだが、劇中でいじめても哀れをさそいすぎないというポイントでお声がかかったんだろうなあ。いっそのことローラ・リニーみたいなお母さんぽい役者さんにやらせてみたら火サスみたいな味がでてよかったかもしれないぞ。よかったのはクルーニーの同僚でスウィントンが所属する農薬会社の弁護をしているうちに良心の呵責でタガがはずれ告発する側にまわるトム・ウィルキンソン。70年代の映画だったらこっちをジーン・ハックマンあたりで主役にすえ、クルーニーの役はそれこそロイ・シャイダーを脇にもってきて、ハックマンが死んだ後の終章をしぶくキメるとか。といった妄想が浮かんでくるくらいにはいい映画だったかなウン。