スラヴォイ・ジジェクによる倒錯的映画ガイド (2006 ソフィー・ファインズ)

イメージフォーラムフェスティバル2008にて。ちなみに原題はThe pervert's guide to cinemaで「ジジェク教授の変態のための映画入門」とかしたほうが気分。1947年の「失われた心」から始まって「街の灯」のラストシーンで幕をおろすまで150分、あちこちからひっぱってきたフッテージにかぶせてジジェクがきっつい東欧訛りの英語でしゃべりまくるだけでなく、紹介する映画に似せて作ったセットに本人が立って小芝居をはさんだりするかたちでほぼ出ずっぱり。20キロ増量したヒゲ面のジェフ・ダニエルズがクラックのやりすぎで半死半生、ちゅう感じの外見なんだけどそんなのが「めまい」のJ・スチュアートからの切り返しショットでキム・ノヴァクのかわりにホテルの窓辺に座っていたりするので油断がならない。そのほか「マトリックス」のせっかくだから赤い薬を選ぶぜ!のシーンとかD・リンチ印の赤い緞帳のステージとか、セットのみならず照明やトーンまで違和感ないようにつくりこんであり、制作スタッフのモチベーションがここにあるのがよくわかる。んで肝心の講義内容ですがなにしろ2時間半しゃべりたおしなのでこちとら脳みその容量オーバー、「『サイコ』のベイツ邸は2階が超自我1階がエゴ地階がイドという構成になっている」といったキャッチーないくつかのフレーズしか覚えてません。「倒錯的ガイド」というわりには作品セレクトが常識的で、(作者本人がどうかはおいといて)スクリーンから匂いたつような変態っぷりをみてとれるのがヒッチコックだけというのはさびしい。あと、ポルノに対してはいきなり機能主義的な認識になっちゃうのは古くさすぎだとおもうんですけどどうでしょうか。