アイム・ノット・ゼア (2008 トッド・ヘインズ)

ビートたけしといえば昭和の芸能史/平成の映画史*1にその名を刻む立派な人だと思うんだが、やっぱ世界的偉人に比べればまだまだ、ほうっといても他人が「TAKESHI'S」みたいな映画を作ってくれる域には至っていない。
ディランはいままで一枚のアルバムも買ったことがない門外漢だけど、このタイトルと特異な構成は、やっぱり「渦の中心は空白」みたいな、重要な存在でありながらシーンのど真ん中に鎮座するということのなかった彼だからこそ、ということなのかもしれないがよくわからない。それぞれ役名は「ボブ・ディラン」ではなく別にあるがいちおう一役六人、なかにケイト・ブランシェットがまざってて話題になったけどもこの人演技力はともかく清水ミチコ的能力は言われるほどたいしたことないので登場時の「あー、やってるやってる」感がかるく邪魔なんだけど、トッド・ヘインズもこの人のパートはリチャード・レスター風(あの4人組もやってくる)に遊んで撮ってます。ものまね(あ言っちゃった)込みでシリアスにうまかったのはクリスチャン・ベールで、最後教会の伝道師になってしまうオチまで含めて、このディランだけは本気で怒っている感じがしました。先日亡くなったヒース・レジャーは「伝記映画でディランのような歌手の役を演じた映画スター」の役で、でもディランの家庭危機をなぞっている(らしい)エピソードに出演、てややこしいにもほどがある。カミさん役のシャルロット・ゲンズブールがひさびさに良い役、良いカットをもらっておった。

*1:しかし「平成の」ってつくとなんでこんなにどうでもいい感じになるのか