バーン・アフター・リーディング (2008 ジョエル&イーサン・コーエン)@としまえんSC9

前半でこまごまと見せるティルダ・スウィントンの顔芸が後半まったく生かされず、ジョージ・クルーニーの役はハビエル・バルデム、フランセス・マクドーマンドの役は二の腕が充分たぷたぷしてきたペネロペ・クルスでいいんじゃないのってじゃあアルモドバルが撮りゃいいじゃん、というかマクドーマンドは悪くはないんだけど今回の映画では若干宮本信子シンドロームが起きていたといえよう。ブラピは40代半ばにしてこんな役がはまってしまうことの危険があまりわかってない感じなのがよくてぶっちゃけほんとにバカなんじゃないのと客に思わせることに成功している。「思わせないことに失敗している」でも可。本人は「サタデー・ナイト・ライヴ」のスケッチにカメオで出ているくらいの気楽さかもしれないが「おくりびと」のモックンの微妙な眼の落ち窪みが岡八郎に見える一瞬と同質のものがエマニュエル・ルベツキの撮影によりさらにあからさまにスクリーンにさらけ出されていて同世代のオッサンとしては妙にハラハラしながら観ていたのである。彼の退場の仕方はコーエン兄弟らしいっちゃらしいんだが例によって狙いすましたようなところはあんまりおかしくないです(ハゲのおっさんのくだりは全部そう)。「ファーゴ」がチワワみたいな眼をしたウィリアム・H・メイシーの映画であるようにこの映画もパグ犬のような眼をしたリチャード・ジェンキンスの映画であった、と言い切るのは諸々無理がありすぎるのだがあえてそういうことにして読後焼却。