ペネロピ (2006 マーク・バランスキー)

クリスティーナ・リッチは「アダムス・ファミリー」でブレイクした当時のイメージ(=スレた子供)を保持したまま大人の役者として地位を固めつつある希有な存在だが、ゆえに本作における「呪いにより豚鼻に生まれつき、それを憂いた両親が幼少時から一歩も屋敷の外に出さずに育てた純粋培養の箱入り娘」は本来そぐわない役柄の筈*1。だがしかし本作では
豚 鼻 が 超 似 合 う
というアドバンテージを最大限に利用しつつ立派にヒロインを務めております。
中盤の、鼻をマフラーで隠して街中を徘徊するくだりではリッチのルックス上のメインウェポンである「デコとどんぐり眼」の魅力が強調され、むしろ終盤で呪いが解けて鼻がまともになった際に「アレ?豚鼻治ったらもっと綺麗になるはずだが」と拍子ぬけしてしまうほど。おっとネタバレ注意ってもう遅いか。
ハリウッドなら全力を傾注して紅涙を搾り取ろうとするだろう勘どころがあっさりスルーされる掴みの弱い(慎みがあるとも言う)イギリス映画だが、シニカルで意地悪な細部と悪人の出てこないファンタジーぶりのバランスの上でいったりきたりする豚鼻リッチを眺めている分には悪くない。ちょっと長いけどな…って100分しかなかったのか*2

*1:しかし、次々やってくる見合い相手に容姿のせいで振られつづける、という年頃の娘には過酷な状況を「別にどってことない」ような顔で耐えるキャラはリッチ向き

*2:体感時間2時間弱