ジャンパー (2008 ダグ・リーマン)

冒頭、少年時代の主人公が真冬の川で溺れかけてジャンプ能力(テレポーテーション)に目覚める。好きな少女*1にだけはヒントを残し、町の連中にはそのまま行方不明ということにして生まれ育った田舎町を離れ、銀行の金庫から勝手に金を借りながら都会で一人暮らしを始める…思春期ただ中の全能感と罪悪感、この危ういワクワクが次の10分、成人した主人公*2がジャンプ能力を自在に使い、世界を股にかけたスーパーセレブ生活を送る様子を眺めるうちに、凄い勢いでシオシオに萎んでゆくのが却って面白いほどです。
原作では少年のまま、ジャンパーを狩る組織と丁々発止するらしいがそうあるべきだよねえ。故郷を出てから一年後、生活パターンが出来て自信もついて段々慢心が顔を見せ始めるくらいがいい頃合いじゃないか?大人にするなら正義のヒーローか、逆にすっかり悪に染まるか、あるいは市井の人として密やかに暮らしているかだと思うんだ。「お前の力は神のみに許されたものだッ」一本槍でジャンパーを執拗に追うエルLの説教もなんか空回り気味。若手スターをキャスティングしてメジャーに金出させて、ダグ・リーマンがロケついでに旅行したかったんじゃないか(ここんとこそんな映画しか撮ってないしな)。世界を股にかけても五カ国まで、それ以上を巡る映画に傑作なしという警句*3を裏付ける出来だった。

*1:アナソフィア・ロブ。次に見るときはもう大人の顔になってるだろうなあ

*2:ヘイデン・クリステンセン。いい気な若造役ならお任せ

*3:今俺が作った