バンテージ・ポイント (2008 ピート・トラヴィス)

タイトルは「視点」という意味で、筋肉痛とは何の関係もない
「大統領を撃ち抜いた1発を、あなたは8回目撃する」という宣伝文句どおり、映画の前半はアメリカ大統領暗殺の瞬間が視点人物を変えながら8回リピートされる。こういう趣向は「現金に体を張れ」みたいに黙ってやる*1のがかっこいいし演出の腕の見せ所だと思うんだけど、本作はご丁寧に大統領狙撃⇒現場爆破のあたりまで来るとビデオのリワインドみたいに映画がキュルキュルと「はーい戻りましたー」ってなってくれるので田舎のシネコンで観ているお婆ちゃんでも安心 (しかしそこで念押ししないと分からない人はこの映画のストーリー自体が理解できないのではないだろうか) 。
まーそれは映像ギミックの話だが、こんな大仰な仕掛けで描くべき、本当に意外な視点や発見が8個もあんのか?と言われれば実はほぼひとつだけ*2しかなく、あとは、普通にフラッシュバックとかで構成するよりはサプライズをやや多めに出来てるかな・・・設定が無理なところの煙幕としての効果のほうが高いかもだ。パズル的な興味を引かれて面白く観れはするものの、上記のような親切設計?のため重複描写も大目なので4、5回目のリピートあたりから場内には「またか感」が漂い始めます。
リワインドがひととおり終わり、事の真相があきらかになると犯行グループとそれを追うシークレット・サービス(とそのほかの面々)の追っ駆けっこ。監督は劇場映画は一作目だがかつてポール・グリーングラスと同じ製作会社で一緒に働いていたらしく、ここでのカーチェイスジェイソン・ボーン・シリーズっぽい仕上がりになってるけど、似たようなカメラと編集なのに盛り上がりが違うな。あれは乗ってるキャラクターが良かったのか、監督の腕か。
ボーンといえば、「ボーン・アルティメイタム」のかっちょいいウォータールー駅のシーンでスナイパーを演じていたエドガー・ラミレスがあの役をそのまま引き継いだようなイメージで出演。アルティメイタムのラストから一年後、ボーンの言葉を反芻するうち殺し屋稼業から足を洗うことを決意したパズことハビエルだったが・・・みたいな脳内設定で観て勝手に盛り上がった(そうすっとちょっと泣けた)。

*1:一応(たぶん製作側の要請かなんかで)ナレーションが入ってるが、観る側は一切の説明抜きでも観れるようになっている

*2:しかもあくまで「意外な事実」であり「面白い視点」が提供されるわけではない