ノーカントリー (2007 ジョエル・コーエン イーサン・コーエン)

朝まで飲んで倒れて目が覚めたら夜、あちこちでやってる特集上映を全部すっ飛ばしあーららやっちゃったと新聞めくればおお歌舞伎町でコレやってんじゃんといそいそ出向き1000円で二回続けて観て「ブラッドシンプル」のドア越し演出「赤ちゃん泥棒」の荒野の追っかけ「ファーゴ」の狂った人殺し「バーバー」の事故描写とかなりの数のコーエン記録更新を確認するもイメージが確立したスターの使い方は相変わらずうまくなくアメリカではほぼ無名といえるハビエル・バルデムの限りなく悪乗りに近いハードな殺し屋はあくまでも助演というスタンスで成立するものとしてそのもう一方の端には予告編ではなすすべなく追い詰められ殺される男とみえたジョシュ・ブローリンがどこか希薄な印象は保ちながら人外を相手に案外「やる」という感じの持続によりこの映画を分断化から救う実質的主役としてあるならば映画の冒頭から二人の死闘を追跡し同じ土地を巡りながらもどこか隔絶した時空間に居続け緊張の細い糸が思いがけぬ形でふっつり途切れた後のしめくくりに独白する保安官がトミー・リー・ジョーンズ*1だとこれはブンガクの映画化なんだと客を納得させるための立派過ぎる文鎮のようで却ってすわりが悪くここは誰がみても脇役という感じの鶴のような爺さんをどっかから連れてきてあてがうべきだった*2。犬がこわ可愛い。

*1:人チワワハリウッドに現わる

*2:鶴のようかどうかはともかくこないだのデ・ニーロの映画でびっくりするくらい萎れていたジョー・ペシなんかどうかしら。「ジョー・ペシのくせになんにもしない」驚きも込みで。今のバージョンより3倍くらいニガヨシな感じで吐き捨てるように。