うた魂♪ (2008 田中 誠)

いい気な主人公の夏帆どん底におちこむ序盤の展開で、「合唱というもの自体の微妙さ」や「主人公のキャラ」に対する醒めた視線であるべきものが、なぜかそれを演じる夏帆本人のもつ微妙さをクローズアップする方向に向いてしまっていてハラハラする。ここだけちょっとウィル・フェレルの映画っぽいというか。まあ鮭というよりは鯉に似・・・いやなんでもない。 冒頭のお笑いなど演出的にはむしろガタガタと言うべきだが、ここでハラハラしたぶんがその後のどん底からの復活というお約束の展開のリアリティを裏づけしているのだから映画というものはわかりません。
演出は間で笑わせるのかキャラを立たせたいのかどっちつかずなうえに、描写不足も多くてうねりが出ておらず平板だが脚本のほうは薬師丸ひろ子とゴリのエピソード不要じゃね?とかいろいろバラけちゃってるけども、シーンごとにはそれなりに盛り上がる。とくに熱いセリフのはさみ方(真剣10代)にわかってる感あり。「ネガティブハッピー〜」「奈緒子」から続く春の日活青春3連作(新宿西口で一枚600円)のなかではぴあ出口満足度がいちばん高いと予想しまス。しかし夏帆主演の青春映画としてはともかく、コメディとしては途中で「合唱」そのものの微妙さへの目線が封印されてしまい、悪いが最後の「奇跡」なんか観ててちょっと気持ち悪い。覚めた目を維持しつつ本気で盛り上げるのは難度高いが、成功すれば9.5以上の高得点が狙えるのでガンガンいれていくべき。