映画クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者! (2008 本郷みつる)

快作「ヘンダーランドの大冒険」からじつに12年ぶりに本郷みつるが監督復帰。原恵一降板以降のしんちゃん劇場版がいまひとつな感じなのは脚本の構成や監督の腕のせいばかりではなく、スタッフがいいたいことややりたいことの容れものとしてのクレしんができあがり、またそれで変なファン(俺か!さあ殺せ)がついてしまってかえって勢いだけで作ることができなくなったためだと思っているので、本郷監督復帰に際してはごくシンプルにお子さま大喜びのまんが映画をつくってくんないかなという期待もあり。そんなんで一年ぶりに新宿コマ東宝にいってきた。
シンプルはシンプルだった。お子さまは…なんか静かにみてた。冒頭でこの世ならぬ世界での(ポケモンとかビーダマンみたいな)善悪の対決があり、追いつめられた善玉キャラによりタイトルにもある世界をすくう金の矛が現実世界へおくられる。おお、ありきたりだがわかりやすい。この調子でいつものドタバタからいやがうえにも盛りあがるクライマックスまで一気呵成におながいします…。しかし明快なイントロのあと、いつものキャラたちが日常生活をおくるなか野原家にせまる異変という序盤以降の展開は、簡単にいえば、さびすい。別に悪役たちにそうする意図があるわけでもないのに今回の侵略はすごくひそやかに行われ、それに対抗するしんちゃんへの周囲の反応も、ごくふつうの幼稚園児に対するそれである。かすかべ防衛隊までがしんちゃんの主張のみならずギャグをもほぼスルー。本郷的なユニセックスのヒロインが(これまたしんちゃん以外には気づかれずに)参戦するが、異世界がどんなところでそこから侵略されるとこの世界はどうなってしまうのかということの説明が相当あいまいなまま、夜しかおこなわれない侵略計画が3夜目にやっと実現に向かうころには上映時間の半分がすぎているのだった。侵略は野原家一同の知るところとなり、いちおう家族一丸となって敵にたちむかうくだりもあるのだが…。
おそらく「家族やともだちの助けを借りず戦うしんちゃん」というところでやってみたい、という本郷みつるの意図があっての試みかと思うが、それが全面的に展開されているわけでもなく(だいいちそれならもっと燃える映画になっててほしいよな)、なんか70年代のゴジラみたいな「低予算感」が(アニメなのに)漂う結果になりました。ちなみに挿入歌が3曲もあり、すべて本郷監督の作詞。ここからは「大人は金のことばかりで子供がなにをいっても聞く耳もたないけど、あきらめずにいれば明日にはなにかが変わっている(かもしれないよ)」という、前向きにいこうと思ってたんだけど今だとこのくらいが精いっぱいかな、な監督のメッセージが読みとれなくもない。
毎回おなじみ作画爆走のみどころとして「スカイ・クロラ」への牽制か?みたいなかなり本気(太陽を背に急降下的)なプロペラ機の大空中戦があるんだが…オールCGてとこまで張りあわんでええがな。