異常性愛記録 ハレンチ (1969 石井 輝男)

「シネマ紀行 京都ものがたり」という特集でこの映画をかけるラピュタ阿佐ヶ谷は偉いと思う。
高級クラブのホステス(「ママ」って呼ばれてたが)橘ますみが古い商家の旦那・若杉英二に執拗に付きまとわれる。いまは新しい男・吉田輝男を見つけて彼と旅行中の橘が、若杉とのおぞましい時間を回想し・・・という出だしなのだけど、橘がまだ若杉と手を切ってはいないということがわかるあたりからだんだん構成が怪しくなってきて後半はかなりのカオス状態に突入、終盤若杉がカルーセル麻紀とSMプレイしたり覗き部屋でゲイボーイと3Pしたりするくだりなど「タイトルに異常性愛と入ってるわりに変態プレイが少ないのに後で気がついた」という以外に入ってくる理由がないよ。
見ものは吉本新喜劇の世界に片足踏み込んだ若杉英二の怪演。

  • 手のひらを胸の前で開いて「しあわせ?」「あいしてるんだよぅん」「ぼくさびしいんだよぅん」の幼児語が得意技。
  • 都合が悪くなると目線を上方45度に固定して何も言わなくなる。
  • 都合の悪い電話にはぶっきらぼうに「はい」「はい」しか言わない。
  • 橘がウソをついて部屋を空けていたことがわかるととたんにDV男に変身、「殺す!殺す!」
  • 橘ますみと吉田輝男が談笑しているカウンターにつかつかと歩み寄り「フー!」と吉田がつけたライターを吹き消す。
  • 鼻の穴。
  • のどちんこ。

擬音で表現するなら「テラテラ」しかありえない若杉のアップ。この当時の若杉英二は今の俺よりン歳も若いのかと思うとラピュタの屋上から飛び降りたくもなりましたが、橘の手を引っぱったまま洋式便器に腰を下ろし、目玉をくるりと上にむけて車のワイパーみたいに左右に動かしながら「ぼくが出すところ見てて〜」とのたまうシーンには思わず爆笑。そういう奇人演技のほかは「金回りのいい旦那を見つけたと思ったらヒモ以下のストーカーだった」という当時の男女関係の常識や水商売事情から見た落差がいちばんこわい話で、ときには激しい拒否の態度を見せるものの若杉の「さびしかったんだよ〜ん」攻撃にすぐ煮え切らなくなる橘ますみにむしろムカつきつつ見てました。おまえがそんなだから話が進まんのじゃ。
ラストはこうなるしかないとも言えるけど、何の準備もしてないのにいきなり××××か!と結構驚いた。あとタイトルバックがすんげー怖えぇ。